2012年2月22日水曜日

感想 「東洋陶磁の美」 いってきました


いつか行ってみたい大阪市立東洋陶磁美術館。そこのコレクションがサントリー美術館にやってくるということで、「悠久の光彩 東洋陶磁の美」の展覧会に行ってきました。館長さんの講演もあり、あわせて聴いてきました。


東洋陶磁美術館は、安宅産業がコレクションした貴重な陶磁器をその経営破綻によって散在するのを防ぐため、住友グループの協力によって大阪市に寄贈され、それらを収蔵するため1982年に設立された美術館。国宝2件、重文12件を含む「安宅コレクション」をつくりあげたのは、天性の審美眼を持っているといわれた安宅英一。



その安宅産業がモデルとなったドラマ「ザ・商社」。タイトルがすごい。。石油ビジネスに進出した巨大商社が、事業に失敗し経営破綻してしまうまでを描いた実話に基づく話。原作は松本清張『空の城』。
わたしの中の安宅英一は、このドラマで演じていた片岡仁左衛門さんそのままのイメージで、絵にかいたような骨董趣味の近寄りがたいおじいちゃん。もちろんコレクションは趣味とかのレベルでなく、最高級といわれるようなものばかり。安宅産業の事業よりも美術品の収集や、若手音楽家の育成に傾倒したりと、パトロン的存在でも知られる安宅英一。

日曜美術館では「執念と礼節のコレクター」と紹介され、側近でもあった伊藤郁太郎さんは『美の猟犬』と比喩している。安宅英一についての形容詞には狂気のような恐ろしさがあるけれど魅力を感じる。

なので今回見られる品々は、ほとんどがその怖いおじいちゃんの眼にかなった逸品たち。安宅英一の眼を見られるという楽しみもあり出かけてきました。

中国や韓国の陶磁器の歴史など、館長の話を聞いていると、もっと知りたい病にかかります。中国では今でも、絵画などより書や工芸のほうが芸術性が高いそう。ヨーロッパなどでは「飾り」と見られてきた工芸も、中国では窯の中に入れてみなければ分からない、という不確実性から生み出す技術に重きを置かれるため、陶磁器が最も芸術性の高いものだという。特に北宋時代の美意識は今からみるとモダニズム的な要素が一番表れていた時代だったそうで、アクションペインティングのようなことも行われていたり、陶磁器に微妙に表れるひびが美しいとか、鑑賞方法も変わっていたよう。さすが中国4000年の歴史。一つ知ろうとすると、深い歴史が芋づる式についてくる。ほかにも青磁の中のトップクラスで王家しか使ってはいけないという「秘色青磁」の話や、安宅コレクションの性格など、てんこ盛りで頭がぱんぱんでした。日本の陶磁器のお話もあり、特に割れた茶碗や欠けた陶磁器を全く違う質感や模様などを用いてで継ぎはぎする方法の話は印象的でした。修復された桃山時代の器のスライドを見たときはそのダイナミックさと発想にびっくり。それでさらに価値が高まるとか、修復の美を鑑賞するとか、その感性が生まれた事はやっぱりかっこいいとしか言いようがないです。。

さて、展示の方については、事前知識があろうとなかろうと、先入観を持っていようと、なんにも知らなくても、素晴らしい以外何ものでもないと思います。私も知らないことだらけで見てきましたが、その美しさに驚愕。次の壺、次の器と前に立ってはめっちゃいいやん・・の連続。めっちゃいいやん祭りでした。感動すると言葉で語りたくなる、でも目の前にすると語り尽くせないむなしさがある、そんな感情と共に見てきました。


あとで振り返ろうと、こちらは図録。写真と記憶を繋ぎ合わせて全体の印象を思い出す。サントリー美術館でもとても美しく見えましたが、できることなら美術館という場でもなく、安宅英一が言った青磁の鑑賞方法で心行くまで眺めてみたい。秋の日の障子一枚隔てた光でみるのがふさわしい、おのれの青に染まるから」。おのれの青・・・。そしてそんなベストポジションが分かるまで眺め尽くした人が羨ましい限りです。


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