2012年1月27日金曜日

印刷博物館へ訪れる

館という施設。

美術館、図書館、博物館、映画館、記念館、文学館・・・

園もいいけど館がすき。

動物園、植物園、公園、楽園、遊園地・・・


園は生きている気がする。なんとなく、今生きているライブな感じ。館は止まっている。そこに収められた時からどんどん過去のものになっていく。物事を俯瞰で見つめるための施設。

そういうなかま分けをしていくと、水族館は誤りじゃないか。正しくは水族園じゃないのか。例えば「動物館」だったら剥製っぽいじゃない。
それに館だって、「やかた」という場合は、異人さんとかが住んでいたんじゃないか。でも館には「やかた」という人の住むものと、「かん」という施設の二つの意味があるんだ。じゃあ体育館はどうなるのか。
うーん・・ よくわからない仲間分けゲームは失敗。

私が小さいころには、近くの公民館の中に体育館と図書館があった。館のなかに館。館の入れ子状態。その頃の図書館でも、できるだけ古い本を見つけようとしていたことを思い出す。古くなったものや昔のものに比較的惹かれやすいのは、いつからだったんだろう。古ければ古いほどいい。いつか高価な壺でもつかまされるんじゃないか。


先日行ってきた館は、印刷博物館。印刷の歴史が分かるということと、もちろんここでも当時の古い資料などが見られるということで行ってみました。


ここは凸版印刷が運営していて、飯田橋からちょっと歩いて凸版のビルの地下にあります。近くには小石川植物園、小石川後楽園と、こちらは園に囲まれた館でした。

平日ということもあり、人がほとんどおらず、かなりゆったりと見る事ができました。小さな博物館かと思っていたら、やたら館内が広い。そして情報量が多い。映像で見られる解説のパネルなども設置されていて、ひとつひとつ見ていけばかなり時間も必要だし、博物館としての充実度はかなりなものでした。そして入場料は300円。

見たかった百万塔陀羅尼や印仏・摺仏。印刷の歴史の流れを紹介していく中で、え、本物?というくらいさらっと重要な資料達が沢山展示されています。解体新書、学問のすすめの初版本、棟方志功や駒井哲郎などの版画、浮世絵ももちろん。日本だけでなく海外の資料も、ビルマ教典、活版印刷を発明したグーテンベルグの「42行聖書」、『ペリー提督日本遠征記』などなど。さらに実際に印刷を体験できる「印刷の家」というスペースもあり、至れり尽くせりの博物館でした。

1階のP&Pギャラリーでは、「世界のブックデザイン2010ー11」という展示が行われていました。色んな国の様々なデザインの本を、手に取りながら眺められます。そしてこちらは無料で見れました。


とっても満足した館でしたが、情報量の多さに頭がパンクしたのか、頭痛により後半早足で退出したのが少し残念。
館に行くと、思った以上に情報処理に目や頭を使うので調子のいいときに行かないとね。


2012年1月22日日曜日

「たけしアート☆ビート」 少し振り返り


去年からNHK BSプレミアムで放送されている「たけしアート☆ビート」は、本当におもしろい!「たけしがいま、一番会いたいアーティストに会いにいく」というキャッチコピーで、国や分野を問わず、色んなアーティストの制作の場に訪れる。それが知っている人でも知らない人でも、どの回も新しい発見や感動があって毎回楽しみにしている。そしてやっぱりビートたけしとそれぞれのアーティストが出会うということ自体が面白い。

今週は、フラワーアーティスト、 ダニエル・オスト。
日本の影響も受けながら、大胆なデザインとモダンさを併せ持つ、不思議な魅力の作品を作るひと。紹介される作品ひとつひとつに、眼が釘付けに。ビートたけしが訪れたベルギーのアトリエも、作品だけじゃなくそこにあるもの全て、とってもセンスがスゴい。
ダニエル・オストの作品は花だけど、その形、様相、全体を見ていると、別の世界を覗いているような気になってくる。


はぁ〜・・・ おいしいお茶を飲んだ後のような、。とってもよかった。

また、これまで見たどの人もオリジナルの哲学を持っていて印象深い。

火薬を使う中国のアーティスト、蔡 國強。実際に行われたかは知らないけど、グラウンドゼロの真上に、黒と白の重なり合う煙を打ち上げるイメージには息をのんだ。


日本、京都の深い伝統を受け継ぐ造園家、82才の16代目佐野藤右衛門さん。侘び寂びの美意識や文化が生き様として染み付いていて渋い。
この記事の写真がかっこいい・・)

染色工芸作家の柚木さんの回は、柚木さんとたけしさんが秋枯れの公園へ出掛けて、柚木さんの染めた布を木にひっかけたり、まとわせて遊ぶ。おじいちゃん二人が主人公の、そのまま映画になりそうですてきだった。

数々の世界の名車のデザインで有名な奥山清行さんは、修練のように常にスケッチを重ねる。アイディアが出尽くしてもひたすら書きまくるという。洗練された車という工業製品のデザインも、手という道具に信頼を置く職人気質で裏付けされたものがある。あらゆるものづくりの事に通じるような話だった。

ガラス作家のブルーノ・アマディは、とてつもなく天才的だった。 すごいスピードでガラスの棒から生みだされる虫や生き物は本物と見間違うような生命感と美しさがあった。ベネチアにある小さな工房兼ショップで、時にはお客さんを閉め出してもガラス作品を作り続けるさまは、ちょっと気難しいおじさんに見えるけど心豊かな笑顔が印象的だった。

沖縄で織物を作る上原美智子さん。からからから、きー、ことん・・。織り機の音はなんと心地いいんだと思った。部屋を抜ける沖縄の風も一緒に織っているような、優しい優しい回だった。上原さんもとても優しそうな人で、その柔らかい表情は、織物を介してつながる自然を慈しむ心でできているんだと思った。素晴らしい作品を作る人になればなるほど、“自然から頂いている”とか“素材の声に耳を傾ける”とか自然との関わりが深くなるようだ。

他にも帽子デザイナーの平田暁夫さん、「ビーチアニマル」で有名なテオ・ヤンセン、刀鍛冶の吉原義人さんなどなど色んな人の話が興味深く、全回もれなくおもしろい。

次回は帯プロデューサーの山口源兵衛さんということです。
着物のこととか、奥深そうな世界過ぎでとっつきにくかったけど、また新しい発見や感覚があるんだろうな。 
楽しみに見よう。





2012年1月10日火曜日

初美術館

高知へ帰ったついでに、高知県立美術館にいってきました。

「京都 細見美術館 琳派・若冲と雅の世界」

お正月気分にもちょうど良い華やかな美術工芸品が、細見美術館から高知へやってきていました。おばあちゃん、お母さん、弟と行くいつもと違う美術館。「すごいねえ、きれいねえ、勉強になるねえ、」と話ながら見たものは時間が経ってもすぐに思い出せたりする。一緒に見るのもたまにはいい。

もう一つ、行ってよかったのは神坂雪佳(かみさかせっか)という人を知ったこと。一目見ただけでも、「あ。いいな」と思えるタイプの作品ばかり。一つ知ると神坂雪佳がもう分かるような気になる、独特の美的感覚が醸し出されている。小さなユーモアも見え隠れする楽しさと、洗練された感性が気持ちいい。


美術館でのお楽しみ。ポストカードを購入。

神坂雪佳はそんなに古い人ではなく、幕末生まれで戦争中の1942年に亡くなっている。「琳派の再来」とも言われ、琳派様式の研究を行うかたわら、絵画だけでなく日常生活に根づく日本の美の復興を目指して、工業デザインの世界でも活躍をした人とのこと。

時代時代に登場する、そういう演出家のような人はとても興味深い。日本に息づいた美しい芸術感覚を、単に「伝統」として終わらせない。これからの時代にも生きるものとしてその本質を捉え、生活を豊かにするものとして消化させようと挑戦した人なのだ。きっとね。

どんな事を行った人だったのかもっと知りたい。
もう少し詳しく調べてみよう!



2012年1月9日月曜日

助け合ったり 励まし合ったり


年末年始は、高知へ。
実家に帰るのはギターのチューニングに似ている。
1年に1回、少しずつずれたものを正しい場所に戻していく。

見慣れすぎた景色 家族 古い友達 そんないろいろが
重ったるく、いやになるようで 心地いいような。


吐きそうだけど 気分爽快
そういう変な感じ。

ずっと過ごした場所を見渡すと、自分くささがプンプンする。
空も山も、あそこのお店も、あっちの神社も、その辺の猫も、おばあちゃんも、幼なじみも、あれもこれも全部に自分が透けて見える。
満足いかない今の自分は、その自分と対面して苦い気持ちなるけど、大切にしたい自分のルーツは懐かしくて気楽になる。

変わってないものと 変わったもの
ふるさとも 私も どちらにもあるけど 
それぞれ照らし合わせて 確認して
ちょうど濁った音が取れるように
すっきりさせてくれる。


あけましておめでとう。


助け合〜ったり 励まし合〜ったり
しな〜くて〜いい〜
それが〜 家族なんです

(星野源「家族なんです」より)