2012年12月30日日曜日

感想 「会田誠展」いってきました


何かの番組で秋元康先生が、生きていることはその時代の目撃者であること、のようなことを言っていたのが心に残っています。
会田誠展を見るというのも、今、now、この場所で、同時代を生きているからこそ目撃しておかなければいけないような気がしたので足を運んでみました。

好き、嫌いに関わらずと思いつつ、これまで会田さんの作品を積極的に見た事は無いし、エロ的グロ的なセカイが広がっているのかなあと六本木ヒルズを見上げながら怖じ気づく・・・ ひとまずお茶を一杯。緊張感を和らげてから53階へと向かいました。

「美術館」での個展は初のことだそうで、展覧会は20年以上にわたる会田さんの作品をおおよそ時系列で見ていくことができました。
最初は何だかビートたけしの笑いを思わせるような作品から始まって、戦争、少女などのテーマが現れたと思うと、ビン・ラディンに扮した映像が流れていたり。表現方法も形式も何かにとどまることなく、次々と試みが重ねられていく会田さんのセカイがありました。

ばかみたいなもの、気持ち悪いもの、へんなもの。
一見そんな風に見えるものが多々あって、展覧会の間中、この人ってどういう人なんだろうと考えざるを得ませんでした。

会田さんの作品はやれそうと思っても、ふつうそれは作品化しようと思わないのでは?という「ふつうそれは、」のラインを軽々と越えてしまっています。何も取り繕わず、表そうとしたものをそのまま世にお披露目している態度でいること自体がすごいなと感じました。
「今日もっとも注目されている日本の現代アーティストのひとりです。」
と紹介されていましたが、いわゆる現代アーティストとしての立場とか、アート市場のことにも、はなから関わっていないしこだわってもいない人物なんだろうなと。

とはいえ、作品を洗練させたいし、良いところ見せたいし、簡単に言えば「誰かを気にする」ことは人ならばアーティストだってあると思うんです。でもこの人はそこをまんまオープンにしてしまうような。ありのまま、1965年生まれの芸大を出た会田誠という人間の作ったもの。自分の存在が全ての作品の根源で、前提で、自分の中から排出できるものをどんどんさらけ出している人、そんな人かなと思いました。考えれば考えるほどじわじわと、騙されたかなと思うほど、会田さんという人の持つ魅力を感じました。

腸のようなモチーフで埋め尽くされたピンク色の部屋があり、「どうしてこれを作りたかったか謎」ということが書かれていました。ご本人がどこまで色々なことを意図してやっているのか分からないですが、「どうして」という部分を追求し尽くさずに、形として作品に落としどころを持って完成させているのは、長年作り続けてきた力技を持ってるんだなあと思いました。

散らかっているように見えて、意味の無いようにみえて、でもなんだか結局考えてしまう自分がいます。

「美術が扱うのは本質ではなく表面だ」

という言葉が心に残りました。それは裏腹な言葉にも聞こえて、物事のガワだけを意識して描き続けることは、結局本質を現してしまうこともあるんだと思います。

2000年以降の作品になると、サイズがばかみたいに大きい大作が現れました。
最後の展示室に進むと、すっぽり巨大な部屋におさまった巨大な絵がいくつも。「継続中」と書かれ、今も描き続けられている未完成の作品も2つありました。夜な夜なここで筆を進めているそうです。
個人の好みではこの部屋の作品が一番好きで、大きい空間と絵が作り上げている不思議な場を感じながら、特にラストの「電信柱、カラス、その他」が最も素晴らしくて見入ってしまいました。“困った時の伝統頼み”と本人が言われているように、この画も等伯の松竹図の要素を取り入れているそうです。靄のなか揺れる松竹の空気感を思わせながらも「今この時代この場所」でしか描けない仕上がりになっているところに、またもや力技を感じました。

1965年生まれという事は、会田さんは40代後半になるんですね。
ここ数年の作品は、今まさに気力・体力の最高潮にいるのではと思わされる迫力と迫真がありました。大きいものを描き上げるだけで相当の体力が要ることと思います。
にしてもエロとかグロなものを一番和らげているのは、会田さんのビジュアルが相当大きいなあと思います。同じ事を違う人がすると作品のニュアンスまで変わってしまいそう。

なんだか別に会田さんのこととか・・
と思い続けないで、きっちり見に行ってみて大変良かった展覧会でした。

私が訪れた頃は、図録もまだ仕上げ中で販売されておらず、作品リストも会場にありませんでした。今図録はAmazonでも購入できるようで、作品リストは展覧会サイトからダウンロードできました。

『会田誠作品集 天才でごめんなさい』2012

作品リストpdf


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