2012年3月22日木曜日

感想 「ジャクソン・ポロック展」 いってきました


ジャクソン・ポロックについての関心はこれまで薄く、「アクション・ペインティング」の作品のイメージと、アメリカ美術の中で重要な存在だという認識くらいしかありませんでした。

しかし今回は生誕100年、せっかくの大規模回顧展。これを良い機会に、正式にポロックに出会ってこようと、四の五の言わずにまずは出掛けてきました。


もはや伝説化されているポロックについての色々は、知ろうと思えばあらゆるところに溢れているので、ひとまずそれらの事前知識は頭に入れず見てきました。知らずに行くか、知ってから行くか。時々迷いますが、ポロックはほとんど知らない状態で行ってよかったと思います。何といっても、知らない状態には二度と戻れない。なるべく先入観も排除してまっさらな気分で感じれたことは良かったです。
会期も5/6までと先があるので、色々知った後もう一度行ってもいいかもしれない。

ポロックの作品を見て感じる事は、ほんとうに人それぞれ様々にあると思います。絵の具をぶちまけたような中に、迫ってくるような激しさを感じる人や逆に静けさを感じる人、不秩序の中にもどこか調和を感じたり、音楽が鳴っているような気がするという人も。絶頂期の作品には全ての要素が表裏一体で内在されているように思います。
ピカソやシュルレアリスム、抽象表現のアートが「わけのわからないもの」と言われていた時代はすっかり過ぎてしまった気がしました。ありとあらゆる表現手段が出尽くして、変わったものでも見慣れた今では、その中でより感じるものと感じないものが分かるようになっているんじゃないかと思います。

初期の意外な作品から晩年まで、これほど揃って私はもう見ることはないと思うので、ポロックを知るのには絶好の展覧会でした。

今回目玉となっているのは、テヘラン現代美術館からの「インディアンレッドの地の壁画」という絵。“この一枚、評価額200億円!!”と公式サイトにもでかでかとのっていて、パンフレットに使われています。これは1976年にイランの王妃に購入されて以来、一度も国外に出た事がなかったものだそう。展覧会にはアメリカからの貸し出し品もあるので、国交の断絶している二つの国の代表は結局どちらも直前で開会式の出席を取り止めたということです。その辺りの事情が書かれた記事も興味深い話でした。

 米とイランが呉越同舟したジャクソン・ポロック展

ポロックの沢山の作品を見れた展覧会でしたが、といってもそれぞれの好みもあるので、今回本当に好きだと思った印象的な作品は2点でした。

そしてポロックのことをもう少し消化したかったので、こちらの映画を借りてみました。


『ポロック 2人だけのアトリエ』[DVD]
2003年日本公開

 人物への興味で見たかったので、映画が面白くなくてもと覚悟して見ましたが、期待してなかった分意外と心に重く残るいい映画。というより好きな方に入る映画でした。

ピューリッツァー賞を穫ったポロックの伝記をエド・ハリスが主演/監督で映画化したもの。その伝記も読んでみたかったですが、残念ながら翻訳本が出ていない上に、ななんと934ページもあります。


『Jackson Pollock: An American Saga』1998

映画で見られるのは、アーティストでもある妻のリー・クラズナーと出会う29歳の1940年代頃から、44歳で自動車事故により亡くなるまでのポロック。エド・ハリスが実際に絵の特訓をしポロックの筆さばきまで研究して撮影に望んでいるので、描いているシーンが素晴らしかったです。

ただそれ以前のポロックについては何が影響的だったのか、それからポロック自身が絵について語っている言葉が少ないので、その辺りの思想などについて、映画を見てもまだよく分かりません。

DVDの特典映像では、チャーリー・ローズのインタビュー番組でのエド・ハリスの話が面白かったです。エドさんは片っ端からポロックについて読み、関わりのあった人に話を聞き、画家の心を知るため絵を実際に描いてみたりとおよそ10年がかりでこの映画を作ったそうです。ポロックへの深い理解と思い入れがエドさんにはあります。しかしキッカケは美術館の学芸員だったお父さんが、お前はポロックに似ているということで本をプレゼントされたことだったらしいです。メイキング映像も含めて、これを見逃して返してはもったいない。

映画の中でハンス・ネイムスという人がポロックの記録映画をとっているシーンがありましたが、その映像も展覧会で公開されています。

Jackson Pollock by Hans Namuth

まだまだ私の中で分からないところだらけのポロックですが、 ポロックの絶頂期の作品には、細部をどれだけ拡大していっても全体と同じ形をしているというフラクタル構造が見られるという面白い話もあります。

日経サイエンス ポロックの抽象画にひそむフラクタル

自然界のあらゆる所に見られるというフラクタル。人が美しい、心地いいと思うものには、全てに何か共通点があるのかもしれない。
最終的にフラクタルのことが気になってきたので、何か読んでみます。

今回はこのポストカードにしました。
これもハンス・ネイムスの撮影によるものです。


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