2012年2月2日木曜日

感想 「ザ・ベスト・オブ・山種コレクション」後期にいってきました


山種美術館で開催中の「ザ・ベスト・オブ・山種コレクション」。
去年の終わりに前期の展示を見てきましたが、後期にも行ってきました。

作品リストやパンフレットなどを見返したいとき、比較的どこかに挟まりがち。


このきたない区画のどこかにあるんです。


山種美術館、と言えば、やっぱり速水御舟「炎舞」なんでしょうか。アンケートでもNO.1に選ばれた「炎舞」。初めて見ました。


小部屋のような第二展示室は、前からちょっと怖いなあと思っていた。その第二展示室に進むと、黒い壁、暗い室内の中に浮かび上がるように展示されている「炎舞」があります。第一印象は、思っていたより一回り小さかったことと、やっぱり怖い!という感覚。「名樹散椿」という不思議なかたちをしたツバキの老木の絵を前期で見たときにも、恐怖感のようなものがあった。国立新美術館だったかで、ルソーの「蛇使いの女」を見たときの感覚と似ている。踏み入れたくない、入ってはいけないような世界がその先にあるような。


何ともいえない怪しさと妖しさ。他にも何かに似てるよなあと思いながら見ていたら、分かった。山種美術館そのものの雰囲気と似ている。今の広尾に移転される前の山種美術館は知らないけれど、展示室の観賞環境と絵のハマり具合がすごい。
と思ったら、展示室に入る手前の解説パネルにちゃんと書いてありました。。この部屋は山種美術館が2009年に移転する際、御舟の研究者でもあった現館長の山崎さんが、「炎舞」展示のための最高の環境ということで、かなりの点について配慮して設計をしたコレクションルーム、というようなことが書かれていました。絵そのものの怪しさに加えて、「炎舞」×「山種美術館」の計算し尽くされた完璧な演出が、異様な妖しさを見せていたのでありました。そうなると、別の環境ではどんな印象になるのか、明るい場所でも「炎舞」を見てみたいような気がします。

後期のテーマは、「戦前から戦後へ」でした。洋画と日本画がばちばちと対立していた頃から少し進んで、どちらもそのジャンルの中から新しい表現を目指して試行錯誤が繰り返されて行く時代。

印象深かったものを2つだけ。


川端龍子「鳴門」 昭和4年。
これは作品そのもののデカさと、色の印象と、渦巻く濤の勢いが合わさり、すごく圧倒感のある絵でした。見る側が色々おもうよりも先に、青色と渦がドバーッと流れ込んでくるような、今までにも見た事無いような迫力感。こちらの身体感覚が揺さぶられるので見ていてとてもおもしろかった。


美術館のお楽しみ。ポストカードを購入した福田平八郎の「筍」 昭和22年。
屋根の瓦を描いた「雨」でも有名な福田さん。時々頭の隅を通り過ぎていく、気になっていた福田さん。大塩平八郎と時々ごちゃごちゃになっていた時もある。今回がっつり見た事でがっつりはまった気がする。
どこか抽象的な要素が特徴的な福田さんの絵に魅力を感じながら、さらに深く引きつけられたのは、「筍」の20年以上前に発表された「牡丹」という作品を一緒に見たからだと思う。大胆な構図や模様化されたスタイルに行き着く前の、写実的な牡丹の花の絵。まったく雰囲気が違うので、とても同じ人の作品とは思えない。
でもまた上手い。それもものすごく。匂い立つような牡丹の花。花そのものだけでなく匂いや雰囲気まで感じるような絵でした。「筍」のような大胆さと反対に、とても繊細な印象。どうにか牡丹というものが持つ要素を描き表そうとしたような絵に見えました。
そして見た目は全く違っていても、どちらも対象を観察する距離感が気になりました。近すぎず、遠すぎず。でも、どちらも穴が開くくらい見つめたような執着心があるような気がします。想像力とか気分やテンションなど自分側から出ているフィルターをなるべく排除し、客観的にくまなく観察した先に、「筍」も「牡丹」も出来上がったように思います。なので、「筍」にも写実的な「牡丹」の要素が、また「牡丹」にも抽象的な要素を感じました。後期の展示の中では、福田さんの絵に一番長く時間を使いました。


知りたい人リストにまた一人。
まだまだ全然追いつけない。

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