「福田平八郎と日本画モダン」展について。
これまで福田平八郎について知ったことを出来るだけ頭から追いやって、 山種美術館へいってきました。
2012年は、福田平八郎の生誕120年。そこで平八郎のモダンな感覚に焦点を当てて、これまでの画業の振り返りと、同時代の作家たちの作品をあわせて見るというのがこの展覧会の趣旨でした。時代の移り変わりと共に、様式の変化を試行錯誤していた日本画家たち。その中でも、単純な色面と簡潔な画面を指向し、デザイン的センスを持った画家のみが作り上げることができたスタイルを「日本画モダン」という造語を用いて一つの括りとしています。
「センス」と言うように、改めて見ても優れた色彩感覚にはっとさせられます。このセンスがなければ、平八郎の作品はつまらないものになっただろうなと感じました。
「青柿」 1938年
そして前期では、「漣(さざなみ)」をメインにやはり見たかったのですが、あれ?思ったよりギラギラしていない。
「銀屛風に群青で描いたのが、光を表す上に効果があったと思います。」
と本人の回想の言葉が印象的だったので、銀とはどんな感じなんだろうと想像していました。
それが今回の解説を見ると、実は銀屛風ではなく、金屏風の上にプラチナ箔を貼っているものだということを知り驚き。
この話は結局、銀屛風を注文したつもりが手違いで金屛風が届いてしまい、時間がなかったので上から銀箔を貼ったそうなのですが、後で調べたところ実はプラチナ箔だったというオチでした。
会場には、銀だけ/金の上に銀箔/金の上にプラチナ箔の場合、どう見えるかを比較できる資料がありました。それを見比べながら「漣」を見てみると、一番やわらかい印象になる金+プラチナ箔の効果によって、自然光が水面に当たって輝いているようにも見え、結果オーライというか一番良かったのではないかと思えます。
それからこちらも改めて分かりましたが、「平八郎」という名前の書き方も絵のスタイルが変わっていくように、しだいに緩やかに大らかな文字になっていっているのでした。
左から40代、50代、60代・・
より「へいはちろう感」が増していっています。
同時代の作家たちの作品では、やはり個人的に川端龍子の作品が気になりました。山種美術館でいつも作品を初めて見る度に、不思議な印象に捉われます。それは平八郎とはまた違った、色の迫力と構図の奇妙さです。この人についても、いつかしっかり知ってみようと思います。
それから名前も知らなかった人の作品では、この「宙(おおぞら)」という絵が心に残りました。
「宙」山田申吾 1973年
「雲の画家」とも呼ばれた人だそうですが、「山田申吾」で画像検索をしてみても雲の絵が全然出て来ない・・。もっと他の雲の作品を見てみたいのですが。本の装幀を多く手がけていたようで、文学本の画像が色々と出てきました。
寝転がって空を見上げているときに、ふと遠近感が分からなくなってしまう、そんな気持になる空の絵でした。
そして、後期は「漣」と交代して「雨」が登場。川端龍子の別の絵も見られるようなので、行ってみたいと思います。
図録。今回はコンパクトな形のものでした。収められていた山下先生のお話も、今WEB上で読めるものと共通している部分もあったので、図版として持っておく用とするならこれでなくても良いかなという感じです。
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「福田平八郎と日本画モダン」ギャラリーツアーいってきました(7/6)
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