たばこと塩の博物館で開催中の「江戸の判じ絵 これを判じてごろうじろ」を見に行ってきました。
江戸時代に流行したという「判じ絵」。絵で考える「なぞなぞ」みたいなものでした。
象と金太郎の絵で「雑巾」、真っ黒の目で「目黒」とか、謎掛けのようになっている絵から答えを導くという言葉遊び。
絵からはおもしろそうな雰囲気が漂っているので、いっちょ判じてみよう!という気になるのですが、結構これが難しい。。なかなか正解が分かりません。判じ物に扱われているのは、地名や名所、鳥とか魚とか生活道具まであらゆるものがテーマになっているのですが、今では使われてない言葉も多いのでそこも難しいポイント。
ただ答えと照らし合わせながら見ていくと、結構無理やりな言葉もあったりして面白かったです。展示室で見るには絵が小さいので目と姿勢がかなり疲れます。さらに興味を持ったなら本などでゆっくりみながら楽しむのがいいと思いました。
判じ物はだじゃれや謎掛けなどのような言葉遊びの中に括られますが、そのルーツは平安時代の和歌まで辿れるそうです。とはいえ言葉がある限り、だじゃれのように言葉を掛けて楽しむのはどの時代どの場所でもありそうです。
判じ絵には、例えば「井戸の絵」が出てきたら「い」と読む、というように一つの絵に一つの音を対応させて読む場合もあります。といっても50音全てに当てはまる絵は無いそうですが、自分の名前の音には全部絵があったので、名前判じ絵をつくってみました。
絵を見ているとちょっと自分でも組み合わせてみたい気になります。
50音のなかでも、やっぱり一番インパクトがあるのは「へ」だと思います。
勢いがすごいです。やってやろうという突き出し感がいいですね。
ふんどし姿もかわいらしいです。
そして今回の展示の中でいちばん気になったのが、「絵文字経」もしくは「絵心経」と呼ばれるもの。文字が読めない人でもお経が読めるように、お経の音がすべて絵で表されているのですが、絵が簡略化されていて記号的になっています。それがまたすっきり洗練されたバランスになっていて何とも美しいです。
「絵文字経」は17世紀後半くらいから、岩手県・青森県の太平洋側の南部地方と呼ばれていた場所で作られ始めたそうで、そこのものは「南部絵経」と呼ばれています。真面目なものだから丁寧に作られたんだと思うのですが、一つ一つの絵がなんだかかわいいですね。
「盛岡てがみ館」というところでこの南部絵経についての冊子を発刊しているようなので、ちょっと読んでみたいのですが、盛岡まで行かないと手に入らないでしょうか。。
盛岡市文化振興事業団 盛岡てがみ館の刊行物
それからお遍路さん用に作られた絵心経の手ぬぐいなんかも販売されているらしく、どこかで見つけたら買ってみたいです。こちらも絵が結構かわいいです。
Amazonではなんと250円から買えるんですが。
和風手ぬぐい 絵心経のプリントタイプ【お遍路用品/巡礼用品】
写経のように一度ぜんぶ絵写経してみたいです。
たばこと塩の博物館では、今回の展示に際して関連講演会があったのでぜひ聴いてみたかったのですが、なんと当日行ってみると満席でした。とても残念だったので、講演会でもお話が予定されていた岩崎均史さんという同館の主任学芸員さんによる本を読んでみました。
たばこと塩の博物館では、じつは1999年に同じテーマで展示を行っていたそうです。それによって判じ絵の認知も高まり反響を呼んだこともあって、その時の図録を元にしてこの本が2004年に出版されたということ。たくさんの判じ絵が全てカラーで掲載されています。これさえあれば展示会場でなくともゆっくり眺めながら楽しめる、かなり充実の一冊でした。
『江戸のなぞ絵〈1〉』岩崎均史 2009
こちらは3巻まで出版されている子ども用の本でした。35ページくらいのうすいものです。なぞなぞ絵本として子どもと一緒に楽しむ感じです。
「ことば遊び」について日本の文学史の中から具体的な作品に焦点を当て、その発生と展開を見るといった内容の本でした。和歌、狂言、落語などにでてくる「しゃれ」や、「なぞなぞ」の登場する文学作品などがわかります。
「判じ物の文学史」の章では、その起源を求めて『紫式部集』まで遡り、順に作品を追いながいろいろ形で登場する「判じ物」がまとめられていました。文学作品の拠出を中心に構成されているので、すこし小難しい感じになっています。
たばこと塩の博物館での講演会は、この小野恭靖さんによる「ことば遊びの系譜」という題目での講演会も10月にあるそうです。
意気込んで当日行ったときの「満席です」ほど辛い言葉は無いので、個人的にはぜひ予約制を今後検討してもらいたいところです。